私はパン屋の娘でありました。それは20年間ありました。パン屋というのは、洋菓子職人であった父の夢でした。父がその夢を叶えたことで、私はパン屋の娘になりました。
パン屋の娘というと、いつもやきたての美味しいパンが食べられていいねという印象しかもたれませんが、私は、実家がパン屋という自営業であるが故の悩みを分かってもらえませんでした。
実家の店のスタイルは、店舗と家が一体になっていました。ですから出入りは店からでした。その影響で私は、普通の家というのにとても強い憧れを持っていました。それに、将来は絶対に家で店を出すような人と結婚しないと心に決めていました。
パン屋の娘であったことで、他の人とは違う日常を送った経験は無駄ではなかったと思います。パン屋のサイクルに合わせて、家族全員が動いていました。それが私にとっては当たり前だったのですが、自分の子供には同じ思いはさせたくないと強く思います。
パン屋であるということや自営業であることがいけないのではなく、その中で私が過ごしてきた過去は、実に嫌な思い出で溢れていて、大人になった今でもその時のことを思い出すと、嫌な思いが蘇ってくることに葛藤を感じてしまいます。
私がパン屋の娘であったことは事実で、両親が頑張ってくれたおかけで、今ここにいることも事実です。定期預金などでしっかりと資産運用もしているすぐれた両親でした。それなのに未だに嫌な感情が残っているのは、ある意味苦しいことであります。